そんな窮地を救うべく現れたのが、『ナイト』と呼ばれる特殊訓練を受けた戦闘兵だった。
彼らはモンスターを始末することで生計を立てている。彼らの給料が、たけるのおこづかいよりも高いのか低いのかは不明だが、彼らのお陰で街の平和が保たれているのは確かな事実だ。
――SATANにナイトにモンスター、まるで現実(リアル)の世界がバーチャルにでもなったみたいだな。
武装したナイトやモンスターを見かけるたびに、たけるは思う。もし自分がナイトだったらと考えたこともある。
――もしもオレがナイトなら『ダーク・ネクロフィリア』なんか一捻りなのに。
そもそもが、何故奴等が自分の命を狙うのかが未だ分からない。分かることと言えば、自分の過去の記憶と奴等が絡んでいることくらいだ。
そう、たけるには過去の記憶がない。正確には、生まれてから半年前までの記憶がないのだ。記憶を失う前の幼少期に、自分が何か重大な過ちを犯したせいで、奴等に命を狙われるようになったわけだが、それが何なのか思い出せない。早く思い出したい気持ちもある反面、思い出すことに躊躇う気持ちもある。どちらにしても、あまり楽しい過去ではないのだ。
上履きを下駄箱にしまうと、いつものようにスニーカーに履き替える。緑色をベースに黄色のラインが二本入ったそれは、三日前に買ったばかりで汚れ一つ目立たない。
「あっ長瀬くん」
昇降口の入り口付近で、女子に話しかけられた。同じクラスの神原光(ひかる)。たけるとは席が隣同士の彼女は、今日も頭に大きな赤いリボンを付けている。
「今日は一人なんだ」
「まあね」
「アンタにしては珍しいじゃない。いつもは千尋さんと一緒なのに」
「あいつならオトモダチと帰るんだってさ。男のトモダチ」
「ふーん」
ひかるの顔がわずかににやけた気がした。
「浮気されたってわけ」
「馬鹿、そんなんじゃねえよ」
千尋とはそんな関係ではない。決して、ひかるが考えているようなやましい関係ではない。ただ、住んでいる家が一緒なだけだ。もっと詳しく言えば、千尋の家にたけるが居候しているだけに過ぎない。勿論部屋は別々だし、風呂に入る時間だってバラバラだ。一緒なのは食事をする時とテレステ(ゲーム機の名前)で遊ぶ時くらいでやましいことは何一つもない。
「あいつとはただの従姉弟だって、前話したろ?」
「うん。でもさ、その割にはアンタ、千尋さんの話ばっかしてるじゃない?」
「そうかあ?」
「うん」
そんなことはどうでもいい。どうでもいいことなのに、ひかるはやたらこういう話に突っ込んでくる。これだから女子は嫌なんだ。
「あんまり、調子に乗るんじゃないわよ?」
唐突に、彼女はそんなことを言った。
「はあっ?」
意味がわからなかった。が、すぐに千尋のことだと気付いたので言い返す。
「だからさあ、オレは別に千尋とは――」
「あいつらのことよ」
「え?」
「ダーク・ネクロフィリア」
その言葉に、どくんと大きく、心臓が脈を打った。まさかひかるの口からその単語が飛び出すなんて、これっぽっちも予想していなかったからだ。予想外の言葉に、たけるの鼓動は早まる。
彼らはモンスターを始末することで生計を立てている。彼らの給料が、たけるのおこづかいよりも高いのか低いのかは不明だが、彼らのお陰で街の平和が保たれているのは確かな事実だ。
――SATANにナイトにモンスター、まるで現実(リアル)の世界がバーチャルにでもなったみたいだな。
武装したナイトやモンスターを見かけるたびに、たけるは思う。もし自分がナイトだったらと考えたこともある。
――もしもオレがナイトなら『ダーク・ネクロフィリア』なんか一捻りなのに。
そもそもが、何故奴等が自分の命を狙うのかが未だ分からない。分かることと言えば、自分の過去の記憶と奴等が絡んでいることくらいだ。
そう、たけるには過去の記憶がない。正確には、生まれてから半年前までの記憶がないのだ。記憶を失う前の幼少期に、自分が何か重大な過ちを犯したせいで、奴等に命を狙われるようになったわけだが、それが何なのか思い出せない。早く思い出したい気持ちもある反面、思い出すことに躊躇う気持ちもある。どちらにしても、あまり楽しい過去ではないのだ。
上履きを下駄箱にしまうと、いつものようにスニーカーに履き替える。緑色をベースに黄色のラインが二本入ったそれは、三日前に買ったばかりで汚れ一つ目立たない。
「あっ長瀬くん」
昇降口の入り口付近で、女子に話しかけられた。同じクラスの神原光(ひかる)。たけるとは席が隣同士の彼女は、今日も頭に大きな赤いリボンを付けている。
「今日は一人なんだ」
「まあね」
「アンタにしては珍しいじゃない。いつもは千尋さんと一緒なのに」
「あいつならオトモダチと帰るんだってさ。男のトモダチ」
「ふーん」
ひかるの顔がわずかににやけた気がした。
「浮気されたってわけ」
「馬鹿、そんなんじゃねえよ」
千尋とはそんな関係ではない。決して、ひかるが考えているようなやましい関係ではない。ただ、住んでいる家が一緒なだけだ。もっと詳しく言えば、千尋の家にたけるが居候しているだけに過ぎない。勿論部屋は別々だし、風呂に入る時間だってバラバラだ。一緒なのは食事をする時とテレステ(ゲーム機の名前)で遊ぶ時くらいでやましいことは何一つもない。
「あいつとはただの従姉弟だって、前話したろ?」
「うん。でもさ、その割にはアンタ、千尋さんの話ばっかしてるじゃない?」
「そうかあ?」
「うん」
そんなことはどうでもいい。どうでもいいことなのに、ひかるはやたらこういう話に突っ込んでくる。これだから女子は嫌なんだ。
「あんまり、調子に乗るんじゃないわよ?」
唐突に、彼女はそんなことを言った。
「はあっ?」
意味がわからなかった。が、すぐに千尋のことだと気付いたので言い返す。
「だからさあ、オレは別に千尋とは――」
「あいつらのことよ」
「え?」
「ダーク・ネクロフィリア」
その言葉に、どくんと大きく、心臓が脈を打った。まさかひかるの口からその単語が飛び出すなんて、これっぽっちも予想していなかったからだ。予想外の言葉に、たけるの鼓動は早まる。
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