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どれくらい時間が経っただろう。ゲーセンから出ると辺りはすっかり暗くなっていた。
厚い雲が空全体を覆い隠し、遠くで雷が鳴り響く。いつもなら沢山の人で賑わっている通りのはずが、今日は誰一人として見当たらない。
――やべえ、今日に限って傘持ってねえんだった!
今になって、今日の天気予報を思い出す。曇りのち雨。所により雷雨。
思い出したとたん、ああやっぱりあの時帰っておくべきだったと後悔した。高いところやお化け屋敷と同じくらい、たけるは雷が大の苦手なのだ。こればかりは、記憶を失う前から苦手だったと断言できる。
早く家に帰らないと。焦る気持ちが胸の中を支配する。早く帰りたい一心で、馴染みの通学路を走った。走ったつもりだった。
ドンッ!
全身が何かにぶつかり、地面に腰を打つ。
「いってえ!」
見上げると、男が一人立っていた。
「ちょっ! どこ見て歩いて――」
言いかけた言葉は、雷の音に掻き消された。
闇に溶ける漆黒のスーツ。黒いサングラス。頭から爪先まで黒ずくめの男。たけるは、この男たちをよく知っている。
――まずい。
咄嗟の判断で地を蹴る。男とは反対方向へ走る。力の許す限り全速力で走った。
――また奴等が現れた。
追ってきた銃弾が肩を掠める。下手クソ!そう罵ってやりたいところだけど、とてもそんな余裕はない。何せ、『奴等』はしつこい。一度見た獲物は逃さない。そういう方針なんだろう。ちらりと背後を見やると、どこから現れたのか、追っ手は五人に増えていた。
これだけ派手に騒いでいるのに、誰一人として見当たらないのは何故だろう。いつもなら犬を連れて散歩しているおばさんも、部活帰りの高校生の姿も見当たらない。それどころか、店や建物内に人がいる気配すら感じない。まるで時が止まったかのようだ。それがせめてもの幸いか。人がいたらいたでまた警察やナイトのご厄介になる。面倒事だけは避けたいところだ。
走って走って、走った先には公園が見える。確かその先には深い森が広がっているはずだ。そこでなら、奴等を撒ける。
――よし、突っ込むぞ!
雨足が強まる中、ずぶ濡れになる全身を振り絞って、たけるは森の中へと身を投げた――
どれくらい時間が経っただろう。ゲーセンから出ると辺りはすっかり暗くなっていた。
厚い雲が空全体を覆い隠し、遠くで雷が鳴り響く。いつもなら沢山の人で賑わっている通りのはずが、今日は誰一人として見当たらない。
――やべえ、今日に限って傘持ってねえんだった!
今になって、今日の天気予報を思い出す。曇りのち雨。所により雷雨。
思い出したとたん、ああやっぱりあの時帰っておくべきだったと後悔した。高いところやお化け屋敷と同じくらい、たけるは雷が大の苦手なのだ。こればかりは、記憶を失う前から苦手だったと断言できる。
早く家に帰らないと。焦る気持ちが胸の中を支配する。早く帰りたい一心で、馴染みの通学路を走った。走ったつもりだった。
ドンッ!
全身が何かにぶつかり、地面に腰を打つ。
「いってえ!」
見上げると、男が一人立っていた。
「ちょっ! どこ見て歩いて――」
言いかけた言葉は、雷の音に掻き消された。
闇に溶ける漆黒のスーツ。黒いサングラス。頭から爪先まで黒ずくめの男。たけるは、この男たちをよく知っている。
――まずい。
咄嗟の判断で地を蹴る。男とは反対方向へ走る。力の許す限り全速力で走った。
――また奴等が現れた。
追ってきた銃弾が肩を掠める。下手クソ!そう罵ってやりたいところだけど、とてもそんな余裕はない。何せ、『奴等』はしつこい。一度見た獲物は逃さない。そういう方針なんだろう。ちらりと背後を見やると、どこから現れたのか、追っ手は五人に増えていた。
これだけ派手に騒いでいるのに、誰一人として見当たらないのは何故だろう。いつもなら犬を連れて散歩しているおばさんも、部活帰りの高校生の姿も見当たらない。それどころか、店や建物内に人がいる気配すら感じない。まるで時が止まったかのようだ。それがせめてもの幸いか。人がいたらいたでまた警察やナイトのご厄介になる。面倒事だけは避けたいところだ。
走って走って、走った先には公園が見える。確かその先には深い森が広がっているはずだ。そこでなら、奴等を撒ける。
――よし、突っ込むぞ!
雨足が強まる中、ずぶ濡れになる全身を振り絞って、たけるは森の中へと身を投げた――
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